ラケットについての先入観が選択を左右する/No.6

ラケット選びに大きく影響する「思いこみ」!

渡されたラケットと選んだラケットの違い

ラケットドックでは、参加者は2種類のパターンで試打を体験します。

谷口コーチから直接フィッティングを受ける際には、「今度はこれを打ってみて下さい」と谷口コーチから渡されるモデルを次々と持ち替えながら打ちます。
これとは別に、フィッティング以外の時間は、気になるモデルを自分で自由に選んで試打してもらいます。

ここで面白いのは、この二つのパターン、ラケットを受動的に渡される場合と能動的に自分が選ぶ場合とで、ラケットの感じ方が変わるということです。
谷口コーチのフィッティングを受けているときに、「これはどう感じますか?」というコーチの質問に対して「結構いいですね。あっ、でもこれ、さっき自分で選んで打ったはずだけど、その時はこんな風に感じなかった—–」というやりとりがよく見られます。

このように、同じラケットでも自分で選んで打った場合と、次から次へと渡される状態で何も考えずに打った場合とでは、感じ方が変わることがあります。
それは一体どうしてでしょうか。

選ぶことはイメージを持つこと

ラケットドックで使う試打ラケットは全部で70~80本くらいあって非常に数が多いので、フリー試打の時にも手当たり次第に端から全部打つというわけには行きません。
当然のことながら、試打するラケットを自分で選ばなければならないのですが、その際に「先入観」や「思いこみ」というものが入り込む可能性があります。

数多くのラケットの中から選ぶということは、そのモデルに興味があるということで、そのラケットを試打する前に「きっと、あんな感じのラケットなんだろうな」というイメージや期待感を持っているのです。

ブラックラケットテスト—イメージなくしてラケットの評価は成り立たない

もう一つの事例をご紹介します。だいぶ前のことですが、「ブラックラケットテスト」というのをやったことがあります。

一般プレーヤーを対象にしたニューモデルラケットのテストの際に、デザインイメージとか先入観を排除して純粋にラケットのフィーリングを評価してもらおうと考え、真新しいラケットをステンシルインクで真っ黒に塗ってテストしました。
ステンシルインクとは、ストリング面にブランドマークを入れる際に使うインクで、全てのラケットをツヤ消しの黒に塗りつぶしたのです。
その結果何が起きたかといえば、テストは見事に失敗しました。
テスターの評価にバラツキがありすぎて、集計してもラケットの性格を表すものにならなかったのです。

通常は、テスターの技術レベルに関係なく40~50名くらいの母体数を集めて評価を集計すれば、ある程度納得できる評価がモデル毎に得られたのでしたが、このブラックラケットテストでは評価がバラバラで、集計してもまとまりのある結果になりませんでした。
この結果から得られた結論とは、「イメージなくしてラケットの評価は成り立たない」というものです。

黒く塗りつぶしても、フレーム形状をよく見れば何のモデルかは判別できるはずですが、デザインが隠してあることでテスターは、ラケットの性能をイメージすることを止めてしまうようです。

頭でイメージを作って体で確認

この二つの事例から分かることは、通常、ラケットをテストするという作業は頭と体の両方で行っているということです。
頭で形成するラケットのイメージを、体で実際に打って確認するというような仕組みになっていると思われます。
ですから、ブラックラケットテストのように初めからイメージのない状態で打つと、体で感じる情報のみになるため、その感じ方が人によって大きく変わることになるのです。

私自身、そして他の多くのテニス関係者も同じだと思いますが、ニューモデルのテストをする際には、まずそのラケットのスペックを頭に入れた上で打っています。
フェースサイズがいくつでフレーム厚がどれくらいという数値を頭に入れることで、打つ前に「たぶんこんな感じだろうな」というイメージが形成されて、知らないうちにそれがラケットの評価に影響を及ぼすことがあるのです。
ラケットについてよく知っている人ほど、そのイメージ(先入観)の形成が自動的に行われるといえます。

分からないものを理解するためのジャンル分け

新しいもの、よく分からないものについて、ある程度大まかな分類方法を考えて、それによって個々のアイテムを区別するという方法は一般的で、それなりに実用性は高いと思います。
テニスでも、新製品のスペックを見て、楽そうなモデルだとかハードヒッター向けだとかのジャンル分けをすることで、何となくそのモデルを理解したような気になるものです。
このように、ジャンル分けによって頭で作られたイメージは、ある面でそのラケットの性能を把握するための手助けになりますが、その中身の性格にまで深く踏み込んでいないため、間違った先入観が作られる原因となる場合もあります。

レッテルを貼って組み合わせる

「もう初心者ではないけれど、上級者用では辛いだろうから、中級向けの中厚オーバーサイズの中から選ぼう。」などというように、ラケットを区別するのに、初級者用、中級者用、上級者用などの技術レベル別分類というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。
ラケットに、“上級者向け”とか“ハードヒッター向け“とかのレッテルを貼って、それを選択の際のキーにするというやり方は、かなり広く行われています。
そして、その際にはラケットだけではなく、プレーヤー自身にも”女性の初中級者”とか“男性の中上級”などのレッテルが貼られます。

この、ラケットとプレーヤーのレッテルの組み合わせでラケットを選ぶという方法は、一見、合理的にも思えますが、双方の実際の機能・性能を把握した上での判断ではないので、ミスマッチになる可能性も多く含んでいます。

例えば65歳の男性プレーヤーにピュアコントロールチーム、55歳の女性プレーヤーにツアーNXグラファイトSPOSなどという組み合わせは、常識的に見れば「掟破り」ですが、それぞれの体の動きやスイングスピードに合っていればベストフィットになることがあります。
この場合、「そういう年齢のプレーヤーには厚ラケしかない」というように、表面的なレッテルの組み合わせで決めつけてしまうと、ミスマッチが発生して不自由なテニスを強いられることになります。

テニスでは、上手くても下手でも体の使い方、運動感覚、ヘッドスピードなどは人それぞれなので、プレーヤーを年齢、性別、技術レベルなどの表面的な区分けでワンパターン化して扱うことができないというのが現実です。

易しいハードスペックモデルも対象に

現在のラケット市場は、従来は上級者向け、ハードヒッター向けと区分されたジャンルで発売されるモデルの性格が非常に易しくなってきているため、そのクラスのハードスペックモデルは最初から対象外と考えていたプレーヤーにも、充分使えるモデルが増えています。
実際に打ってみると意外に易しいこれらのモデルを、先入観や頭で作られたイメージに左右されることなく、白紙の状態でトライしてみられることをお勧めします。

全体的にハードスペックモデルへの移行が顕著な今の市場動向の延長線上には、フレーム厚25mm以上のモデルが無くなってしまうというようなことも考えられます。

谷口シェフのおまかせ

話は戻りますが、ラケットドックでは基本的に自分で選ぶのではなく、谷口コーチにお任せでラケットが目の前に出てきます。
シェフにお任せの料理屋のように、自分であれこれ考えてオーダーするのではなく、出されるものを味わうことに専念できるわけです。
自分があまり知らないものをオーダーするときは、このやり方のほうが嬉しいですね。

渡されたラケットを打つとき、プレーヤーは自分で選んではいないので、そのラケットのイメージを持っていません。
通常は、頭が描いたイメージというフィルターを通した上での試打になり、そのフィルターが評価に影響を及ぼすのですが、自分で選んでいないラケットを白紙の状態で打つという経験はラケットドックならではといえます。
それによって、頭で作ったイメージに影響されることなく、純粋にラケットを味わうことができます。谷口シェフはその動きの変化を観察しながら、次に出すものをチョイスするわけです。

谷口コーチ自身のテスト方法とは

ちなみに、ラケットテスターとして日本の第一人者といえる谷口コーチがニューモデルをテストするときの方法とは、「打っている時に自分の体の動きが変化するのを客観的に把握する」のだそうです。
確かに、先入観や思いこみに左右されない良い方法だとは思いますが、私も含めて普通の人にはそんなこと、とってもできません。

<< 前に戻る   次へ進む >>

ラケットドックの
紹介レポート一覧へ


ラケットドックのトップへ

ラケットでプレーが変わるなんて
とても信じられない!
「ラケットでプレーが良くなるなんて、そんな都合の良い話があるはずはない」と考える方が多いかも知れません。でも、プレーの良し悪しはラケット次第で変わります。そして、その仕組みはとてもシンプルです。⇒続きはこちら

Click↓
ラケットでプレーが変わる動画

ラケットドックで
自分に合うラケットを見つけて
テニスをもっと快適に!

CLICK↓



ラケットとガットについての記事が
全70タイトル!

テニスワンの
「ラケット選びのノウハウ集」へ


 

テニスワンのトップページへ