「プレイヤーの感覚」と「客観的な機能判断」の違い/No.9

「打った感じの良いラケット」と「自分のプレーが良くなるラケット」が同じとは限らない

情報を集めようとしても、なかなかうまくいかない

通常、ラケットを選ぶときには、何らかの方法で買いたいモデルについての情報を集め、それをもとにいろいろ考えて決めるというパターンが一番多いのではないでしょうか。
カタログやテニス専門誌、インターネットなどから情報を探し出したり、テニス仲間から話を聞いたりなどで集めた情報をもとに、自分に向いているであろうというモデルを探し出すわけですが、ここで困るのはなかなか納得できる情報が集まらないことです。
カタログを見ても今ひとつ性能が実感できなかったり、いろいろな人に話を聞いても、聞けば聞くほど意見がバラバラで分からなくなったりすることがあります。

試打すればOK!?

最近は試打できる環境が整ってきているので、試打してから決めるという方も多いでしょう。
実際に使う人間が試打して決めれば間違いないと一般には思われているようですが、これについても怪しい部分があります。

試打してみて良かったというとき、普通はそのモデル名だけを記憶する場合が多いのではないでしょうか。
で、実際に買って使ってみたら「あれっ、違う!」ということが良くあるのですが、その原因の一つには、良かったラケットのストリングセッティングをコピーしていないことが挙げられます。

さらにもう一つの要素として、ラケットは1本1本スイングウェイト(振ったときの重量感)が異なっており、それによってボールの飛びや打感が変わるのですが、試打したラケットのスイングウェイトが分からないために同じものを選ぶことができず、結果的にフィーリングが変わってしまうということもあります。

では、試打したモデルのスイングウェイトとストリングセッティングを完全にコピーしたら、それでベストな選択ができるかといえば、実はそうではありません。

『ラケットvs私』という二人称

さて、前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

通常の試打では、モデルの打感や飛びなどをプレイヤー自身がチェックするのですが、そのときに得られる感覚情報は打った本人だけのものですので、最終判断は本人が下すしかないというということになります。
「ラケット」VS「私=打った本人」という二人だけの世界(二人称)なのです。

この二人称構造の問題点は、打った本人が自分で判断できない場合はどうにもならないということです。

実際に、「打ってみたけどよく分からない」という声はよく聞きますし、「打ってみて悪くはなかったけれど私に合うのかどうか分からない」といわれることも多いのですが、これが実は試打というものの本質を突いた鋭い指摘なわけで、ごもっともだと思います。

パーツ交換による機能変化

このコーナーでこれまでレポートしてきたラケットドックは、基本的に、ラケット選択におけるこの二人称構造を三人称にする取り組みです。
「ラケット」と「私=打った本人」という二人称の世界から、「ラケット」と「私=打った本人」と「それを見ているコーチ」という三人称の世界になります。

これを、立場を変えてコーチの側から見れば、「コーチ」VS「プレイヤー+ラケット」ということになり、プレイヤーとラケットを「組み合わせた1セットのもの」としてとらえることができます。
それはちょうど、パーツを取り替えることでプラスドライバーになったり、マイナスになったり、六角レンチになったりというドライバーセットと同じで、プレイヤーという本体に対して、ラケットというパーツを取り替えることでその機能が変わります。

その実例については、これまでこのコーナーでいくつかご紹介してきましたが、まさしくプレイヤーは「ラケットによってプレー機能を左右される存在」なのです。
「ラケットを持ち替えることでフットワークが良くなる」などというと、実際に見ていない方には信じられないかもしれませんが、ラケットドックの現場ではごく当たり前に起きています。

「プレイヤーの感覚」と「客観的な機能判断」

試打することで得られる打感や飛びなどの感覚情報を、ラケットドックでは「プレイヤーの内部感覚」といっていますが、試打によるこれまでのラケット選びは基本的に、この「プレイヤーの感覚」をベースにして行われてきました。

「打ったときにプレイヤーがどう感じるのか」が判断の基準だったわけです。

これに対してラケットドックでは、ラケットというパーツを交換することで機能変化するプレイヤーを外部から観察して、もっとも高い機能を発揮する組合せを見つけるという作業をしています。
これを「プレイヤーの感覚」と対比させるため「客観的な機能判断」といっています。
それぞれの違いを簡単に説明すると次のようになります。

例1) 良く飛ぶラケットを使ったときに「あっ、ラクだ!」と感じて、「余計な力が要らないからこれにしよう!」というのが「プレイヤーの内部感覚」による選択です。
それに対して、その楽なラケットを使っているときのプレイヤーの動きを見て、「スイングを中途半端に止める動きが出てきて、膝の動きや体重移動も抑制されている。」というような判断を下すのが「客観的な機能判断」です。

例2) 打感が柔らかくホールド性の高いモデルを打ったとき、「当たりがソフトでコントロールしやすい」と感じるのが「プレイヤーの感覚」で、「球離れが悪いため、インパクトでボールを必要以上に送り出す動きが出ている。」と見るのが「客観的な機能判断」です。

プレーの向上と関係のない選択

このように、「プレイヤーの感覚」と「客観的な機能判断」とでは観点が根本的に異なるため、判断結果も一致しない場合が多いのですが、打ったプレイヤーがラケットをどう感じるかということと、そのラケットがプレイヤーに合うかどうかということとは全く別なことなのです。
裏返せば、従来の「プレイヤーの感覚によるラケット選択」は、手から伝わる感覚の好き嫌いを選んでいるだけで、そのラケットが本人のプレーを向上させるかどうかとは関係のないところで行われてきたといえます。

谷口コーチはよく、ラケットドックの現場で「好きな食べ物と体に良い食べ物」という例えを使います。
「プレイヤーの感覚」で選んだラケットは「好きな食べ物」で、「客観的な機能判断」で選んだラケットは「体に良い食べ物」というわけです。
どちらを選ぶかは本人の判断に任せるしかありませんが、ゲームに勝とうとするのであれば結論は明らかです。

見てもらうことの価値

かくいう私自身、人に対しては客観的な機能判断の重要性を語っていても、自分に関してだけは特別で、自分の「内部感覚」による選択には絶対の自信を持っていました。
ラケットの販売に25年以上かかわってきており、説明して販売するという立場上、ラケットの性能を正確に把握しなければならないわけで、自分の使うラケットの選択とストリングセッティングについても、当然のことながら正確な判断を下していると考えていたわけです。
その根本が揺り動かされることがありました。

ある時、谷口コーチと何気なく雑談しているときに、私の使っているラケットのストリングセッティングの話になったのですが、「もっとこうしてみたら」という彼の意見が私の考えていた方向性と正反対だったのです。
非常にショックだったのは、実際にやってみて谷口コーチの指摘したほうが明らかにプレーの結果が良かったということです。
仕事でお客様のラケット選択やストリングセッティングの相談に乗っている立場上、自分のラケットのストリングセッティングを間違えるなんていうのはシャレにもならないわけで、ガーンという状態です。

ショックを受けていても仕方がないので気を取り直して、「これがプレイヤーの内部感覚と客観的な機能判断の根本的な違いだ!」と居直ったわけです。ラケットやストリングがどんな感じなのか(=内部感覚)について豊富な知識を持っていても、それが自分自身のラケットやストリングセッティングを決める際には何の役にも立たないのです。
「自分の感覚」は当てにならない、というより、当てにしないほうが良いということが良く分かりました。

ラケットについて良く知っていることと、自分のプレーにフィットするラケットを選ぶことは全く別なことで、「外からプレーを見てもらうこと」の価値は、ラケットについての情報を蓄積することでは代替できないということです。

ラケットメーカーの方やコーチの方がラケットドックのシステムを視察に来られた時に、よく「自分が受けたい!」と言い出されることがあり、「それは視察のテーマではないんじゃないの」とつっこみたくなるのですが、私はもちろん、自分のラケットを選ぶときは谷口コーチに見てもらいます。

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